あなたが生を受けることができたのは、ご両親がいらしたからです。
そのご両親にも父母がいて、あなたという存在は、ご先祖様から現在まで受け継がれてきた、いわば命の証《襷(たすき)》です。
あなたの瞳はご先祖様のどなたかにそっくりかもしれません。
指の長さや爪の形もご先祖様からいただいてあなたの体が出来ているのです。
相続とは『相(すがた)を続ける(うけつぐ)こと』なのです。
この世に生を受け、ご先祖様からいただいた命の襷(たすき)を次の世代につなぐこと。
代々受け継がれてきた有形の財産をつなぐ責任感をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
また、財産の相続だけでなく心、愛、気持ち、信条、家訓などの想いも大切に受け継いでもらいたい『想続』=『想(想い)を続ける(うけつぐ)こと』なのです。
『想続』は、愛する子供や孫たちに、ご自身の生き方や想いを伝え遺すことであり、子供の立場からは、ご両親の心を敬う気持ちで受け継ぐことです。
親の生き方、遺したい想いを受け継ぐことはご先祖様を敬い、供養する心にも繋がります。
国税庁の発表によると、現行の税制では、相続税を払うケースは100件のうち約4件です。
(平成24年度統計より)
それに対して、相続がまとまらず、裁判所のお世話になるケースは100件のうち約12件にもなります。
(平成24年度司法統計より)
つまり、相続税を払っている約3倍ものケースがもめてしまっているのです。
資産家の相続がもめるのかというと、そうではありません。
家庭裁判所に持ち込まれる件数の約73%は遺産額5,000万円以下という統計結果もでています。
この数字は裁判所の司法統計ですから、審判などの手続きがなされていない件数も合わせるとさらにその
数は増加します。
つまり、相続税を払わないごく普通のご家庭でも、親族が遺された財産を巡って争う『争族』になってし
まう可能性があるという事です。
これは、戦後、家長制度から個人主義に世相が移行したことにより、家督相続が常識ではなくなってきて
いること、また、兄弟姉妹は平等との権利意識に変わってきたこと、さらに、近年の長引く不況から、兄
弟姉妹といえども経済格差が広がってきていることなどが原因といえるでしょう。
また、相続財産が、分割が困難な不動産のみという場合もあります。
① 現在、円満に相続できる件数は減少の傾向にあります。
相続について何も準備をしなかったため、争族となってしまったり、残されたご家族に相続税が重い負担となってしまったり、本来は手放したくなかった財産を手放す事になってしまったというケースもあります。
また、分割しにくい財産(不動産など)のみが相続財産である場合も話し合いが難航します。
相続をきっかけに兄弟姉妹が絶縁状態となり、一緒にお墓参りもできなくなってしまうのは、とても悲しい事です。
誰も、そのような状態を望む人などいません。
一方、円満な相続をされるご家族は、3つのキーワードについて価値観を共有されています。
それは、この世に産んでくれ、育ててくれた親に対する『感謝』と
先祖を敬う気持ちと責任感からの『供養』
家族の幸せと子孫の繁栄を願う『絆』です。
日頃から、ご自身が3つのキーワードについての想いをご家族に伝える事が出来たなら『争続』にはなりにくいでしょう。
人はみな年をとり、いつかは別れのときが訪れます。
行政書士として相続のお手伝いをさせていただいたお客様のなかには、
「もっと(生前に)父母と話をしておけばよかった。1人の人間として父母のことを何も知らなかった。」とおっしゃる方も少なくありません。
どなたの人生にも尊いドラマがあります。
まずは、ご自身の人生のたな卸しとしてエンディングノートを書かれるのもいいでしょう。
エンディングノートを書きますと、『将来発生する問題点』が見えてきます。思いがけないトラブルが発生しないように、事前に備えていただきたいものです。
実際に、円満な相続のために事前に備えることとは何でしょうか。
それは、『遺言書』を作成することに他なりません。
もちろん、遺言書を作成しなくても、あなたの財産は法律にのっとって相続人が相続することに変わりあ
りません。
たとえば、相続人がお子様1人だけで、そのお子様に全財産を相続させるのであれば、わざわざ遺言書を
作成する必要など無いでしょう。
しかし、相続人が2名以上いる。
あるいは、相続人以外に自分の財産を遺したい人がいるなどの場合、やはり遺言を作成していただいたほ
うが……いいえ、はっきり申し上げます。それが、あなたの《襷を渡す》最後の『務め』なのです。
遺言書があるとどのように有効であるかをまとめました。
①相続手続が円滑に進む
「きちんとした」遺言を遺すことで、通常の相続手続で必要となる「相続人調査」「相続財産調査」「遺産分割協議書」が不要となる。手間と時間がかからない。
遺言執行者を定める事により、相続人の協力を仰がずに手続が迅速に完了できる。相続人が慣れない手続きに疲弊することを防ぐ。
②円満な相続が実現できる
遺言者自身の意向が反映される為,相続人間の納得が得られやすい。
遺言内容を工夫する事により、バランスの取れた遺産分割が実現しやすい。
遺言執行者として適任者を指定することにより、相続人同士の無用な争いを防止できる。
以前このブログで、財産の『相続』と心の『想続』があるとお話しましたが、遺言書の中に、『想』い
を『続』けるメッセージを入れる事が可能です。
残されたご家族は、受け継ぐもので「愛」を確かめようとします。
それはもはや、目に見える物とメッセージからしか、亡くなった方の「愛」が伝わらないからなのです。
当事務所では、どなたにも納得していただけるような遺言書の作成のアドバイスをさせていただいており
ます。
また、必要であれば、遺言書の作成をお考えになった動機や状況をお伺いしてあなたの『想い』が充分に
伝わる文案も作成いたします。
次のような場合は特に遺言書の作成をお勧めしています。
①お子様がいない場合
相続人が配偶者と兄弟姉妹もしくは甥姪にまで及び、手続が非常に複雑になる事を防ぎます。
②再婚している場合
再婚により親の違う子供同士が話し合う事になり、精神的な負担がかかることを防ぎます。
③相続人が遠方に住んでいる場合
実際に集まることが困難となるでしょう。
通常の手続きからさらに時間が掛かります。
最近では海外にお住いの相続人も増えてきました。
親密度が低いので、自己主張が強くなりがちで、まとまらなこともあります。
その様な状態になることを未然に防ぎます。
④認知症の方や知的障がい、精神障がい、身体障がいの家族がいる場合
障がい者自身やその面倒を見る方に配慮が必要となります。
成年後見人の関与も必要となるため手間と時間がかかります。準備をすることが愛情とも言えます。
⑤相続人の中に音信不通の人がいる場合
音信普通の人を抜きにして相続が出来ませんので、連絡が取れないと進みません。
遺言書があれば話し合いを省略することができます。
⑥事業、農業を営んでいる場合
分散、分割を避ける事で承継が円滑に進みます。
⑦相続人同士が不仲の場合
まさしくドロ沼の『争族』となる危険が非常に高いです。
⑧事実上の離婚状態にある場合
たとえ長年別居していたとしても戸籍上の配偶者には半分以上の相続権があります。
配偶者の相続分をゼロにすることはできませんが、ある程度は譲りたい人に財産を譲ることができます。
⑨内縁の妻がいる場合
内縁関係には相続の権利はありませんが、遺言事項に盛り込むことで法的効力が生じます。
相続について考えることは、これまでの人生を振り返り、家族のあり方を見つめなおすことでもあります。
この機会にこれからの人生と、お子様たちの将来をお考えになられますことをお勧めいたします。
遺言は『遺書(いしょ)』とは違います。
遺言を亡くなる間際に発する言葉と思っていらっしゃる方がいるかもしれませんが、まったく違います。
次の世代に争いを持ち込ませず、それぞれに幸せな人生を送ってもらうための、最後の仕事が『遺言書作成』なのです。
遺言書を作成された方の多くは、「肩の荷が下りた。」とその後の人生を楽しんでいらっしゃいます。
「財産の相続」と「気持ちの想続」どちらも大切な命の襷(たすき)です。
当事務所では、争いを未然に防ぎ、先祖を敬う供養に繋がる遺言書の作成と、円満相続のお手伝いを使命に、全力であなたさまとご家族さまを応援します。